たごころ農園からのメッセージ
先人たちから受け継いだ土地を守り、美味しいお米づくりを続けていくため、たごころ農園は誕生しました。
私たち、たごころ農園の水田は、若狭湾から10キロほど内陸に入った、山々が一級河川北川を挟んで向かい合う谷間にあります。
若狭の山々は高すぎず日々の暮らしとも近い存在ですが、冬場は北陸の地にふさわしくしっかりと積雪があります。冬の間、山々は豊富な雪を得て、春になると栄養をたっぷり含んだ水が流れ出します。若狭湾の海の幸が美味しいのはそのためだそうです。豊かな山が豊かな海を育むように、豊かな山は豊かな里を育みます。
今、私たちが眺めるこの風景は、古くから人々が自然を尊重し、ともに暮らしてきた証です。人と自然の歴史は、この土地に相応しい知恵と美味しい恵みを今の私たちに授けてくれました。
日本人の繊細な味覚に挑戦
日本人の食卓に欠かすことのできない米。しかし、その消費量は10年前、20年前と比べると格段に少なくなってきています。米作りと向き合うことは、私たちのこれからの食文化のあり方と向き合うことでもあります。食べていただくみなさまに常に「美味しい」と喜んでいただけるよう、受け継がれた農法で丁寧に作物を育てることを大切に、品質と味にこだわった米作りを追求しています。
先人たちの叡智に学び、その知見を活かす
美味しい米をお届けするために私たちが取り組むのは、「土づくり」と「人づくり」です。
たごころ農園の「土づくり」は前年の秋からはじまります。年間を通じ、土壌を丁寧に分析し、徹底して稲の育つ環境を整えています。わたしたちの田んぼは、決して優等生とは言えません。面積の狭い田んぼや、いびつな形をした田んぼも多く、不揃い。肥料の持ちもよい方ではありません。田んぼごとの個性を知り、ベストパフォーマンスを引き出せるように、それぞれの田んぼに合わせて手を加えていきます。
米作りにおいて鍵になってくるのは、田植えと稲刈りの間の「管理」。一つ一つの田んぼへ足を運び、目で見て状態を確認したり、田んぼの草を丁寧にとったりといった手間も惜しまず、毎日の「管理」を大切に行なっています。とても地味で根気のいる作業ですが、この約4ヶ月の間にいかに目をかけ手間をかけてきたかによって、お米の出来栄えに差が現れてきます。目をかけ、手をかけ育つのは、米も人も同じです。美味しい米には、田んぼや稲の状況に寄り添える「人」の存在が欠かせません。
人が変われば田んぼが変わる。田んぼが変われば米が変わる
私たちたごころ農園は、生産・労働環境の「カイゼン」に取り組んでいます。無駄を減らし、より快適で安全な環境を実現できるよう、TOYOTA式「5S」を導入しています。
それだけでなく、この取り組みは、スタッフ一人一人の意識の変化をももたらしてくれました。日々の積み重ねによって、ハードもソフトもより快適な環境になることで、「美味しい米作り」にとことん集中できるようになります。
環境次第で田んぼも人も個性が輝く
日々の積み重ねのベースになっているのは、朝夕のスタッフミーティング。その日その日の成果や失敗を共有し、次にどう生かすのか互いに考えを話し合う時間を設けています。たごころ農園のチームとしての土台をより強固なものにしてくれる大切な時間です。
これからのたごころ農園の成長を支えるのは、一人一人のチャレンジです。スタッフの多様性こそが財産であるという考えのもと、それぞれの個性が活かせる環境づくりに努めています。これからもスタッフ全員で成長をし続けていきます。
未来を見据えた持続可能な農業を
昨今、そんな私たちの農業をサポートしてくれるのが「先端技術」の力です。
「土づくり」においては、適切なタイミングで適切な量の農薬・肥料を使うことに役立ちます。土壌の状態を測定し、客観的な指標をもとに調整を繰り返しながら、検証と研究により土壌の課題に向き合い続けています。
また、AIやIoTといったIT技術の導入も進めています。例えば、ドローンを使った農薬散布。コメにとって悪い影響を及ぼす細菌や害虫を駆除したり予防したりするために行う農薬散布ですが、ドローンの活用で、必要最低限の農薬を的確に散布することが可能になります。また、田植え機の走行をアシストするシステムも導入。GPS衛星からの電波を受信し、まっすぐに走行するのをサポートしてくれます。
魅力ある農業の実現
たごころ農園では、志を持った若いスタッフも活躍しています。美味しい米作りを続けていくためには、農業が多くの若者にとって魅力のある職業になるよう環境を整えていくことも必要です。
IT技術導入による農業の効率化や作業負担の軽減。「カイゼン」の取り組みによるよりよい生産環境の実現。そういったことの積み重ねで、農業では実現が難しいと言われていた休日の確保も可能にしています。また、作業エリアが広域になることもあり日頃の作業において個々の努力が見えづらいので、個人が目標を設定しその成果が賃金に反映される仕組みを取り入れ、モチベーションの向上につなげています。
近年では、海外輸出にも挑戦。2019年にはアメリカのカリフォルニアで販売を行いました。米作りと合わせて販路拡大にも力を入れ、魅力あるブランドへと育てていけるよう尽力していきます。
私たちたごころ農園がこういった変革を積極的に行うのは、先祖代々受け継がれてきた土地を大切に守り、美味しいお米を作り地域の食を支え続けるためです。今、私たちに託された土地は、私たち先祖代々の土地だけではありません。やむなく稲作を続けることが難しくなった地域の方々の大切な土地もお預かりしていて、その面積は年々増え続けています。たごころ農園に託された土地を大切に守り、近隣地域の皆さんの未来を明るく照らす存在として笑顔あふれる未来を創造すること、それが私たちの使命です。
地域の風景をつくる
この近くには古墳や集落遺跡などが数々あり、その出土品などから、このあたりでは、弥生時代前期後半ごろには稲作が生活の中に定着していたと言われています。たっぷりと張った水面に映る山々と空の景色。青々とした苗がそよそよと風に揺れる風景。稲穂を濡らす雫が朝日に光る景色。黄金色に広がる実りの風景…。遥か昔の人々が見ていたのと同じように、四季とともに移り変わる景色は人と自然がともに作り出す傑作として私たちを楽しませてくれるものです。米づくりに支えられた日本の田舎の原風景とも言えるこの景色を、100年後も1000年後も、ずっと先の時代にまで続くことを願いながら、私たちは今年も米作りと向き合います。